11月11日 パリ


パリでは、ずっと空き部屋になっている知人のアパートが、いつもの私の定宿。ひとりで気楽なのはいいのだがエレベーターがなく、おまけに7階。フランスでは1階が0階なので、実質、日本で言う8階までの階段を上がるのは結構いい運動になる。10月より市内の高級デパート、ボンマルシェで、私の本の販売が始まっているので見に行った。さすがに高級感漂う雰囲気の中、ガラスケースの中に本が陳列されていて、すでに「BLUE TO BLUE」と「雲ひとつ」は完売。追加注文がきているという。

11日は第一次世界大戦終戦記念日で休日。ピエール、エリザベットと3人で、韓国のアーティスト、インキュン・リーの家を訪れた。パリから車で1時間ほど走っただろうか、みるみる景色は山あいに変わり木々はすっかり紅葉している。少し山道を登り詰めたところに、韓国の古い家が見え、その奥にはガラス張りのモダンな家がある。わざわざ外まで出迎えに来てくれた女性こそがインキュン・リー。品格のある、84歳とは思えぬほど元気な様子。聞けば今なお作品に取り組んでいると言い、紙に描いた近作の墨絵を私たちに見せてくれた。彼女の、亡くなったご主人もまた韓国では有名なアーティスト、ウンノ・リー。墨を使い、書道家でもある彼の作品には何か凄みのようなものを感じる。